研究概要 |
本研究は組織切片上から異常な細胞群を形態学的に観察し、その細胞内ゲノム遺伝子あるいはメッセージを直接採取しDNAシーケンスすることによって病態をより迅速に判定しうるシステムを確立することにある。最終年度に当たる本年度は、減数分裂M期特異的に細胞死の出現するMRLマウスを用い、連鎖解析によって責任遺伝子の染色体上の位置について検討した。 精子形成過程の減数分裂MI期に集中してアポトーシスの見られるMRLマウスと正常マウスC57BL/6とのF1オスを解析したところ、アポトーシスはほとんど出現しなかった。次にこのF1とMRLとの戻し交配個体200例を作製し形態解析をおこなった結果、アポトーシスの陽性:陰性の比率はほぼ1:1となった。これらことから、責任遺伝子は単一劣性の遺伝様式をとることが明らかとなった。戻し交配個体200例のゲノムDNAを抽出し、マイクロサテライトマーカーを用いたPCRによる連鎖解析の結果から、責任遺伝子(MSApと略称)は第1染色体の100cMの位置に存在することが明らかとなった。 第1染色体100cM近傍にはTlr5(98.0cM),Hlx(99.5cM),Tgfb2(101.5cM),Nek2(103.0cM)が位置しており、これらのうちの1つあるいは新規遺伝子としてMSApを同定できるものと考えられた。今後、マイクロダイセクション法を用いて当該部位より直接RNAを分離しdifferential display法やシーケンス解析を行うことのできるモデルとして、さらに検討していく予定である。
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