研究概要 |
前年度に、プリオンの抗原性の消失を目安にスクリーニングを行い、グリシドールが調べた化合物のうちで最も有効と判定されたため、マウスを使用したバイオアッセイによって効果の確認を行った。グリシドール未処理のマウスの潜伏期が184.33日±12であり、3%2時間処理で23.47日、5%2時間処理で48.8日、3%5時間処理で43.6日、5%5時間処理で120.27日それぞれ平均潜伏期が延長した。これらの延長はおおよそそれぞれ10^<-2.5>,10^<-4>,10^<-5>程度の感染価の低下に相当した。 迅速な不活化条件を知るため、グリシドールの濃度を2,3,5%、温度を35,45,55℃、時間を0.5,1,2時間と変化させて調べた所、5%、45℃及び55℃、2時間がもっとも有効であった。温度の器具のへの影響を考慮すると、作用時間を犠牲にしてもより低温が望ましいため、35℃及び45℃でのより長時間処理の条件を検討する必要がある。 エチレンオキサイド処理によって起きるプリオン蛋白の分解についても検討した。プリオン蛋白はある程度特異的な部位で複数に切断され、C端部は保存された断片が存在することがた判った。組換プリオン蛋白で調べたところ、切断点の一つが、コドン129アラニンであることを突き止めた。一方グリシドールはエチレンオキサイドと違い、プリオン蛋白の大な断片が検出できず、蛋白分子の大きさが変化しないことから、修飾されたアミノ酸がそのまま残らずすぐに非特異的に断片化することが推定された。この点はさらに検討を要する。
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