研究課題/領域番号 |
10556070
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
辻本 元 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (60163804)
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研究分担者 |
岩田 晃 (財)日本生物科学研究所, 研究部, プロジェクトリーダー (70193745)
阪口 雅弘 国立感染症研究所, 免疫部, 主任研究官 (20170590)
大野 耕一 山口大学, 農学部, 助手 (90294660)
亘 敏広 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助手 (50220950)
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キーワード | 犬 / アトピー性皮膚炎 / 日本スギ花粉 / ハウスダストマイト / 皮内反応 / 血清中抗原特異的IgE検査 / 主要抗原 / リンパ球細胞株 |
研究概要 |
慢性のめ痒感を主徴とする犬のアトピー性皮膚炎は、獣医臨床において最も治療が困難な疾患の一つとされている。これまで根治治療法として感作抗原を用いた減感作療法があるが、効果が不定で、アナフィラキシーショックなどの副作用があるために広く用いられていない。このような背景をもとに、本研究では有効な新規根治治療法の開発を最終目的とし、平成10年度はその基盤を固めるため、犬のアトピー性皮膚炎症例における技内反応試験および血中抗原特異的IgE抗体の検出よる感作抗原の疫学的調査を実施した。さらに、感作抗原の特定した症例において、ヒスタミンの放出能およびリンパ球芽球化反応を測定することで抗原に対する反応性を検討した。 アトピー性皮膚炎と診断された42頭の犬における感作抗原の疫学的調査では、26症例において感作抗原を特定することができた。その中では、ハウスダストマイトによる感作が最も多く、21症例に認められた。次いで、日本スギ花粉感作が4症例、小麦感作が1例であった。これら症例においては、感作抗原に対して抗原特異的なヒスタミン放出およびリンパ球の芽球化反応も確認され、イヌにおいてもヒトと同様な抗原感作が存在することがわかった。特に日本スギ花粉の感作が認められた症例においては、日本スギ花粉主要抗原のCryj1とCryj2を認識していることが明らかとなり、ヒトの日本スギ花粉症の自然発症動物モデルとして有用であると考えられた。日本スギ花粉に感作された症例からリンパ球を採取し、日本スギ花粉抗原およびコンカナバリンA存在下で1カ月間培養し、日本スギ花粉抗原に特異的に増殖反応を示すリンパ球細胞株を得ることができた。現在、この細胞株についてより厳密なクローニングを行なっている。 以上の研究結果により、イヌのアトピー性皮膚炎における抗原感作の背景が明らかとなった。さらに、抗原に対する反応性はヒトのアレルギー性疾患と類似していることがわかった。これら平成10年度の研究成果は平成11年度のT細胞エピトープの検索とそれを用いた新規治療法の開発研究に対して十分な基礎データとなると思われた。
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