研究課題/領域番号 |
10556079
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
熊谷 英彦 京都大学, 農学研究科, 教授 (70027192)
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研究分担者 |
澤武 紀雄 金沢大学, がん研究所, 教授 (90019969)
福味 廣員 福井工業大学, 工学部, 教授 (90288340)
纐纈 守 岐阜大学, 工学部, 助手 (50178208)
山本 憲二 京都大学, 農学研究科, 助教授 (70109049)
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キーワード | 肝ガン / α-フェトプロテイン / 腫瘍マーカー / ガン性変異 / 変異糖鎖 / 単クローン抗体 / 複合型二本鎖糖鎖 / 糖転移活性 |
研究概要 |
肝細胞ガン患者の血清中には胎生期に現われる糖タンパク質であるα-フェトプロテインが出現し、腫瘍マーカーとして知られている。この糖タンパク質は一分子に一本のN-結合型糖鎖を有しているが、ガン性変異によって特有な構造になる。本研究ではα-フェトプロテインよりもより特異的にガン性変異を反映する糖鎖に注目し、これを調製して抗原とすることにより肝ガンに特異的な単クローン抗体を作製して、肝ガンの検査試薬を開発することを目的とした。この糖鎖は複合型二本鎖の還元末端側のN-アセチルグルコサミン残基にフコースが結合した構造を持つ。そこで、鶏卵の卵黄に存在する糖ペプチドの複合型二本鎖糖鎖を微生物のエンドグリコシダーゼを用いて免疫賦活物質に転移させた後、糖転移酵素によりフコースを導入し、これを抗原として単クローン抗体の作製を試みる。本年度は抗原となる糖鎖の調製と糖鎖の単クローン抗体作製法の一般化について検討した。 先ず、鶏卵の卵黄をフェノールで抽出した後、イオン交換カラムとゲル濾過カラムによってN-結合型糖鎖(複合型二本鎖糖鎖)を有する糖メプチドを分離調製した。この糖ペプチドに細菌のシアリダーゼとウシ由来のガラクトシダーゼを作用させ、糖鎖の非還元末端に存在するシアル酸とガラクトースを除去した後、ダンシル化して、フコシル基転移酵素の基質となるダンシル糖ペプチドを調製した。本基質を用いて、大腸菌で発現したブタ肝臓由来の組み換えフコシル基転移酵素の活性を検討した。一方、糸状菌のエンドグリコシダーゼの特異的な糖転移活性を利用して、上記の鶏卵卵黄より単離した複合型二本鎖糖鎖を持つ糖ペプチドを糖鎖供与体とし、免疫賦活性を持ち、かつ抗原性の乏しいアルキル鎖に複合型二本鎖糖鎖を転移付加させた。反応液よりHPLCによって糖鎖転移生成物(アルキル糖鎖)を単離し、これを抗原としてマウスの腹腔内に注射して免疫した。脾臓細胞をマウスより摘出してミエローマと細胞融合し、ハイブリドーマを検索して抗体産生株を得た後、これをマウスの腹腔内に注射して腹水を採取し、カラムクロマトグラフィーによって単クローン抗体を精製した。得られた単クローン抗体は微弱ながら複合型二本鎖糖鎖を認識することが確認された。
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