本研究の目的は、ラットの交感神経活動を長期間連続測定する方法を開発することにある。近年、交感神経系は脾臓のNK細胞活性などの免疫機能あるいは肥満成因にかかわるエネルギー代謝調節など比較的長い時間のオーダーで機能調節に直接関与していることが示されてきた。これら長期間の植物性機能調節に関与する自律神経系の全容を明らかにするには月オーダーの交感神経活動の実測を行うことが必要である。 第一に、腰部交感神経活動測定用慢性埋め込み型電極の開発とラット腰部交感神経の解剖図作成を行った。神経電極の開発をすすめたが、良好な結果は得られなかった。検討の結果、ステンレス製の電極が有効であった。また、ラットの筋肉血管の収縮に関与する交感神経系の走行を明らかにする目的で、腰部交感神経系の解剖図を作成した。 第二に、ラットの自由行動下における腰部交感神経活動と下肢血流量の同時測定を行った。上記の方法を用いてラット睡眠時の腰部交感神経活動と循環動態の変化を観察した。結果、ラット睡眠REM期において下肢血流量は減少し同時に腰部交感神経活動が増加した。下肢筋肉血流量の調節は交感神経支配であることが示された。 第三に、ラットのトレッドミル運動時の腎交感神経活動と循環動態の変化を観察した。上記の方法を腎臓交感神経活動測定に応用した。ラットのトレッドミル運動時に外来のノイズの混入無しで良好な腎交感神経活動の測定に成功した。 以上、自由行動下のラットの腰部交感神経活動と腎交感神経活動の慢性記録の方法を確立できた。問題点として、現在計測可能期間が約1週間程度であり、目標の1カ月測定に至っていない。今後の検討を要する。
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