研究分担者 |
二瓶 宏 東京女子医科大学, 腎臓内科, 教授
本田 一穂 東京女子医科大学, 腎臓内科, 助手
原 茂子 財団法人冲中記念成人病研究所, 研究員
山田 明 財団法人冲中記念成人病研究所, 研究員
神林 宏 財団法人冲中記念成人病研究所, 研究員
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研究概要 |
IgA腎症は世界的にみて最も頻度の高い慢性糸球体腎炎であり、約20%の患者は慢性腎不全に進行すると推定され、透析あるいは腎移植治療が必要とされている。我が国の透析患者総数は、1997年末までに総計175,988名に達している。透析患者総数の約25%がIgA腎症と推定されており、その成因の究明は急務である。IgA腎症の成因は大別してIgA,型の自己抗体説と粘膜免疫の外来抗原に対するIgA抗体産生異常説がある。私共は気道ならびに消化管粘膜におけるダラム陰性細菌感染が原発性ならびに続発性IgA腎症の成因に深く関わっていると考え、細菌細胞膜蛋白に着目して検討している。ホルマリン固定した大腸菌、緑膿菌、HaemophilusinfluenzaeあるいはKlebsiella pneumoniaeを、LPS応答性のC3H/HeNならびにLPS不応性のC3H/HeJの両系統の♀、5週齢(30週齢までの実験期間)に経口あるいは腹腔内(1/週)に投与した。腹腔内に細菌を投与した各群でLPSあるいはPBSを投与した対照群に比し統計的有意に糸球体にIgA、C3の沈着を認めた。これらのマウスで蛋白尿はまれに認められ、血尿は認められなかった。これらの腹腔内投与群の血清中に各細菌に対するIgA抗体価が増加しており、このIgA,抗体は細菌細胞膜のlysostaphin(endoglycosidase)分画の17kD蛋白と最も強い親和性を示した。ヒトIgA腎症患者の血清にはこの蛋白に対するIgA抗体価(ELISA法)がIgA腎症以外の腎疾患患者ならびに人間ドック健診者の血清に対して統計的有意に増加していた(Wilcoxon'sp<0.001)。17kD蛋白に対する単クローン抗体を作成してヒトIgA腎症の腎生検組織について検討すると、50/57(87.7%)に糸球体内のIgAと17kD蛋白はほぼ共存していた。非IgA腎症患者群では37/55(5.4%)に弱陽性所見を認めたに過ぎなかった。17kD蛋白は熱刺激に強く発現し、ストレス誘導性であることが分かった,現在17kD蛋白の同定がほぼ完了している。本17kD蛋白はIgA腎症の成因としての必要要件を満たしている可能性があり、今後本蛋白のクローニングを予定している。
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