1.高転移性腺癌では、細胞表面にCD44vを発現し、これがβ1インテグリンと物理的会合状態にある。しかも高転移性癌ではオステオポンチン(以下OPN)の産生が亢進し、CD44vとβ1インテグリンの複合体がOPN分子内のRGD配列とは別の部位と結合し、細胞遊走能を亢進させていることを明らかにした。 2.ヒトのstage Iの肺腺癌患者の予後判定因子としてOPNが重要であることを発見した。OPNとVEGFの両者が陽性群は、他の群と比較し有意にCD34陽性の血管新生が増強し、かつ生存率が有意に低いことを発見した。 3.OPN遺伝子導入マウス(OPN TG)を用いて、OPNと動脈硬化の関連につき明らかにした。免疫系に選択的にOPNを発現するTGマウスに3ヶ月にわたって高脂肪食を経口摂取させた。高脂肪食投与によりTG群では対照群に比し、大動脈valsalvaにおける動脈硬化巣の拡大が認められ、硬化壁中のマクロファージに強いOPNの発現が認められた。 4.OPN TGに酵母の菌体成分を静注すると、対照群に比し、多数の肉芽腫形成が認められ、その期間も長期間に及んだ。OPNに対する単クローン抗体を投与することにより、肉芽腫形成が抑制され、肉芽腫形成にOPNが重要な役割を果たしていることを明らかにした。 5.OPNに存在するアレルにより、OPN機能に差が生じることを明らかにした。aとcのOPNを有するマウスはzymosan投与により、著明な肉芽腫形成を認めるが、bのOPNを有するマウスは肉芽腫形成がみられない。bのOPNは一塩基配列により、その構造と機能に変化を生じていることが示唆された。
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