研究課題/領域番号 |
10557028
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
安保 徹 新潟大学, 医学部, 教授 (30005079)
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研究分担者 |
川村 俊彦 新潟大学, 医学部, 助手 (70301182)
渡部 久実 新潟大学, 医学部, 助手 (50143756)
関川 弘雄 新潟大学, 医学部, 助教授 (50018694)
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キーワード | マラリア / 胸腺外分化T細胞 / CD56^+T細胞 / CD57^+T細胞 / CD1 / NKT細胞 / 肝臓 / 骨髄 |
研究概要 |
これまでの研究によって、ヒトおよびマウスのマラリア原虫感染において活性化するリンパ球は、肝や末梢免疫臓器(末梢血を含む)に存在する胸腺外分化T細胞であることを明らかにした。ヒトではCD56^+T細胞とCD57^+T細胞、マウスではIL-2Rβ^+CD3〓細胞(NKT細胞を含む)である。本研究では、これらの胸腺外分化T細胞の機能解析を中心に行い、マラリア原虫感染における治癒機構への関与を明確にしてゆく。 1. 胸腺外分化T細胞を6.5GyのX線マウスに移入すると、完全にマラリア(P.yoelli)感染血液移入による感染からのがれることができた。この時、二つの興味が生じた。一つは、このX線照射による免疫抑制にもかかわらずコントロールマウスでさえマラリア発症が遅れるということであった。このことは、骨髄機能が抑制され新しい赤血球がつくられなくなると感染が起こらないということを意味している。つまり骨髄で脱核したばかりの赤血球が主にマラリアメロゾイトの標的となっている可能性が示唆された。次に、骨髄や末梢血の赤血球のMHC class I(H-2K)とCDl(monomorphic MHC class I )の発現を見た。その結果約10%の骨髄赤血球はH-2KやCD1を発現していることがわかった。X線照射からの回復期にはこれが60%まで上昇する。末梢血の赤血球はH-2KもCDlも陰性である。驚いたことにこのH-2KやCD1陽性の赤血球がメロゾイトの感染標的となっていたことである。骨髄でもH-2KやCD1陰性の赤血球には感染が認められなかった。この意味は重大である。赤血球のH-2KやCD1の発現は胸腺外分化T細胞による感染赤血球の認識の可能性を意味するからである。つまり、これらの実験結果は免疫された胸腺外分化T細胞がH-2KかCD1に呈示された自己抗原またはマラリア抗原を認識して感染防御を荷なってることを示唆している。 2. 胸腺外分化T細胞をマラリア感染から回復したマウスから精製しているが、回復してから6ヶ月以上たったマウスから分離した場合は防御能がないことが明らかになった。つまり、免疫記憶の消失である。一方、免疫記憶の残っている回復から6ヶ月未満のマウスではlethal stain(XL),P.yoelliの感染赤血球移入によってさえ感染防御が成立した。これらの実験結果は、マラリアにおける免疫記憶の消失はその抗原の変化よりも、系統発生学的に古い性質を持つ胸腺外分化T細胞固有の特徴による現象と考えられた。
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