研究概要 |
TSA細胞の活性を抗原特異的に人為的に抑制制御することが出来れば、自己免疫病、移植免疫、過剰免疫反応によって生ずる種々の免疫病あるいはアレルギーの治療に有効な治療法を提供することになる。我々は上記の目的を達成するために、H-2d MHC classI拘束性に卵白アルブミン(OVA)ペプチドを認識するTCRを発現しているT細胞ハイブリドーマDO11.10細胞より、TCRα,βをそれぞれコードする遺伝子を単離し、そのVα,Vβをリンカーで連結して、これをイッムノグロブリン遺伝子プロモーター、エンハンサーにつないでマウス骨髄腫細胞株で発現させ、scFv(単鎖可変領域フラグメント)型の可溶性のTCR分子を作成した。得られた分子は分子量25kDaでin vitroで安定であり、試験管内で大量に産生させることが出来た。このscFv型の可溶性TCR分子はH-2d MHC classIに結合した抗原ペプチドと特異的に結合した。このscFv型の可溶性TCR分子は元ののTCRと全く同じイディオタイプを保持していた。このscFv型の可溶性TCR分子は抗原ペプチド特異的に免疫反応を抑制し、抗原提示細胞上のペプチド抗原をMHC拘束性に認識し結合することがわかった。同様に、多発性硬化症の実験モデルであるExperimental allergic encephalomyelitis(EAE)を発症したSJL/Jマウスからミエリン塩基性蛋白(MBP)特異的T細胞株を樹立し、Vα及びVβcDNAを単離し、可溶性のscFv型TCRを作製した。今後は可溶性TCR分子を用いて自己反応性T細胞が認識し反応する自己抗原の組織内局在を蛍光抗体法、酵素抗体法を用いて同定し免疫組織学的に検出することを試みるとともに、T細胞の抗原特異的な活性化の抑制をin vitro,in vivoにおいて行う。
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