研究概要 |
平成10年度では,協業の概念および問題点を整理することを目的に,協業体制の先進国であるアメリカの状況と我が国の状況に関する国際シンポジウムを,イリノイ大学シカゴ校(UIC)作業療法学科長Gary Kielhofner教授を招聘して,平成10年12月19日から21日まで,京都市内において実施する予定であった。しかし,直前になって,Kielhofner教授の事情で来日が中止になり,シンポジウムが開催できなかった。しかしながら,幸いにも既にKielhofner教授から詳細な資料が送られて来ていたため,アメリカの状況を知ることができた。 それによると,カナダ作業療法士協会が約10年前から取り組んでいる「クライエント中心の実践(Client-Centered Practice)」と同教授が中心になって開発した「人間作業モデル」が,協業を具体的に進める上で重要であることが明らかになった。人間作業モデルの評価法のうち,「作業に関する自己評価(OSA)」が,人間作業モデルとクライエント中心の実践の両モデルに基づいて作成され,クライエントとセラピストとの協業を推進できることも明らかになった。 平成10年度の第2の目的は,「作業機能自己評価(SAOF)」の日本版を作成することと,協業に関するデータ収集法の開発であった。上述したOSAはSAOFの改訂版であるため,OSAの翻訳を行った。また,関連する評価法のうち,「作業遂行歴面接・改訂版(OPHIII)」についても翻訳を行った。これらは研究代表者から入手できる。 国際シンポジウムの中止により,急遽,平成11年度以降に計画されていた研究を前倒しして実施することにした。平成11年2月26日から28日の3日間,秋田市において,OSAとOPHIIIを用いた協業に関するデータ収集講習会を開催した。参加者は国内の作業療法士11名で,事前に担当患者の症例報告2例を提出してもらうと同時に,協業のあり方を解説し,OSAとOPHIIIを用いた協業のモデル事例を提示した。これによって,症例報告を積み上げるという方法による研究の骨格が固まった。
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