研究概要 |
2年度を通じて、市販の連鎖解析用STRセツトで、ヒトゲノム中にほぼ25cM毎に存在している168ローカスをタイピングできるMapPair8Aを用いて分析した。このキットでは、3色の蛍光色素がいずれか片方のプライマーに標識されており、Version8A multiplex表に従って複数のローカスをPCR増幅し、増幅産物をABI Genetic Analyzer 310を用いてキャピラリー電気泳動し、sizingすることで型判定を行った。日本人32名のDNA資料のタイピング結果から、それぞれのアリル頻度、ヘテロ接合度等を計算した。今年度は、全てのローカスの分析を終え、ヘテロ接合度が0.8を越えるローカスを約20選ぴ出し、GDBなどのデータベースから得られた塩基配列をもとに、繰り返し領域の構造が比較的単純なものを12選ぴ出した。それらのローカスについて、塩基配列を正確に決定した。 この12ローカスについて、3色の蛍光標識色素を用いるマルチプレックスシステムの作成を試みた。正確で容易な型判定を目指し、6つのローカスを一度にタイピングできる2つのシステムを作成した。それぞれ各ローカスのプライマー設計を工夫し、1つのシステムは完成した。もう1つのシステムも一部のプライマー設計の調整を残してほぼ完成している。この市販のSTRプライマーセツトのほか、ノッチンガム大学のアーマー教授が発見したマイクロサテライト群からも不規則アリルがなく、ヘテロ接合度の比較的高い3ローカス(wg1c5,wg1d1,9q2h2)を選定し、マルチプレックスシステムを作成し、その法医学的有用性について日本DNA多型学会第8回学術集会で発表した。このように、日本人の法医学的検査に適した合計15のローカスを用いたマイクロサテライトタイピングシステムをほぼ完成することができた。
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