研究課題/領域番号 |
10557053
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小池 和彦 東京大学, 医学部・附属病院, 助教授 (80240703)
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研究分担者 |
新谷 良澄 東京大学, 医学部・附属病院, 医員
森屋 恭爾 東京大学, 医学部・附属病院, 助手
松浦 義治 国立感染症研究所, 室長
石橋 光太郎 第一製薬, 中央研究所, 主任研究員
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キーワード | 肝炎 / トランスジェニックマウス / コア蛋白 / バキュロウイルス / アデノウイルス / サイトカイン |
研究概要 |
インターフェロンγ(IFNγ)をもつ組み換えバキュロウイルスとアデノウイルスを作製した。ヒトインターフェロンγ遺伝子を持つプラスミドとバキュロウイルス、アデノウイルス遺伝子とそれぞれ組換えを行ない、目的とするウイルス株を得た。これらを用いて、まずヒト肝癌細胞HepG2での発現、活性を確認した。次いで、HBV粒子を産生するヒト肝癌細胞株2.2.15を用いて、組み換えバキュロウィルス感染によるHBV増殖の変化を検討した。IFNγ産生組み換えバキュロウイルスの感染によってHBV増殖は著明に抑制された。In vitroにおけるこのシステムの有用性が確認された。 モデルとするトランジェニックマウスについては、B型肝炎ウイルス(HBV)X遺伝子、C型肝炎ウイルス((HCV)コア遺伝子、エンベロープ遺伝子をそれぞれ発現するトランスジェニックマウスを用いた。エンベロープ遺伝子トランスジェニックマウスにおいては、肝に24か月間にわたって、炎症、腫瘍等の変化は全く見られなかった。コア遺伝子トランスジェニックマウスにおいては初期より脂肪肝が発生し、マウスの寿命の後半において肝細胞癌が発生した。肝腫瘍は、脂肪化した正常肝細胞の中から生じ、それを圧排するように存在した。さらに、脂肪化の強い比較的良性な腫瘍の中から、悪性度の高い肝癌が「結節中結節」の形で発生してきたが、後者にはほとんど脂肪が認められなくなっていた。肝の脂肪化、早期肝癌の脂肪化、「結節中結節」としての悪性度の上昇と脂肪化の消失は、ヒトC型肝炎関連肝癌における性状と酷似している。HCVのコア蛋白、エンベロープ蛋白を発現する組み替えアデノウイルスを作製しマウスに接種したところ、微弱ながら抗体反応が認められたが肝炎は惹起されなかった。バキュロウイルスのマウス尾静脈内投与では、充分な免疫原性の確認が現在のところ成功していない。バキュロウイルスがマウス体内で不活性化される可能性があり、なお検討を行っている。
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