研究課題/領域番号 |
10557057
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
安岡 劭 徳島大学, 医療技術短期大学部, 教授 (30035414)
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研究分担者 |
小山 一 徳島大学, 医学部, 助教授 (80109074)
佐野 壽昭 徳島大学, 医学部, 教授 (80154128)
益田 賢一 帝人株式会社, 創薬第2研究所, 主任研究員
中村 陽一 徳島大学, 医学部・附属病院, 講師 (00237447)
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キーワード | ヒト気道トリプシン様プロテアーゼ / 組換えの標品の合成 / 遺伝子多型 / 気道上皮細胞 / インターロイキン-8 / 線溶系の活性化 |
研究概要 |
我々がヒト気道で新しく見出したヒト気道トリプシプシン様プロテアーゼ(HAT)の気道におけ生理的意義と気道炎症における病態的意義を解明するために、以下の研究を行なった。 1.HATの局在部位:クローニングに成功したHAT遺伝子をvaculovirusをベクターとして昆虫細胞に導入し、組換えHAT(r-HAT)を生合成した。このrHATに対する抗体を4種類作成した。その内のマウスモノクロナル抗体を用い、肺手術時に得られた気管支組織を対象に超感度免疫組織染色法で、HATの局在部位を検索した。この方法で、HAT陽性反応は線毛上皮細胞に限局してみられた。さらに気管支鏡で採取したヒト気管支上皮細胞にもHAT陽性反応がみられた。HATの遺伝子構造に基づき、そのprobeを作成し、種々の細胞を対象にHATのmessenger RNAの存在を検索すること、培養ヒト気管支上皮細胞で陽性であった。以上の成績から、気道系において、HAT腺毛上皮細胞で合成され、この領域で生理的な役割を発揮していると考えられた。 2.HATの内因性タンパク分解能:HATにはプロウロキナーゼを限定分解してウロキナーゼに活性化する作用と、fibrinogenの特にα鎖を分解してトロンビンによるフィブリンクロット形成を抑制する作用、があることが明らかになった。しかし、HATにはプラスミノーゲンを直接活性化する作用はなかった。 3.気道上皮細胞に対するHATの影響:培養細胞として、BEAS-2細胞を用いて検討した。喀痰中の濃度よりさらに高濃度のHATは本細胞に対して障害的に作用するが、喀痰中の濃度よりさらに低濃度のHATは本細胞の増殖を促進した。喀痰中の濃度およびそれよりさらに低濃度のHATが本細胞によるInterleukin-8やGM-CSFなどのサイトカインの合成・放出を促進する作用を示すことが明らかになった。Northan blot法により、HATがinterleukin-8の合成を促進することが確認された。 4.:HAT遺伝子多型の分析:HATの遺伝子多型をヒト末梢血多核白血球を対象に分析した。HATの遺伝子には3つのイントロンがあり、これをそれぞれA、B、Cと命名した。制限酵素処理によりイントロンCに遺伝子多型が存在することが明らかになった。正常者を対照に、種々の慢性気道疾患と肺気腫患者のHATの遺伝子多型を分析した。そのびまん性汎細気管支炎と肺気腫で、遺伝子多型の分布の以上がみられた。 5.まとめ:HATは主に気道上皮細胞で合成され、気道粘膜側で広義の気道の生体防御機能に関与していると推定される。たとえば、HATがウロキナーゼによるプラスミノーゲンの活性化、プラスミンによるコラゲナーゼなどの金属酵素の活性化、らの一連の過程を介して気道粘膜側の組織の分解、再生、修復に関与している可能性が高いと推定される。しかし、慢性炎症性疾患においては、HATの過剰産生が起こり、気道組織に対する直接の破壊作用、サイトカインの活性化作用、リモデリング促進作用、などによりむしろ病態を増幅している可能性があると考えられる。
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