研究概要 |
神経変性疾患の代表的な疾患としてアルツハイマー病患者剖検脳の諸部位におけるグルタミン酸輸送蛋白の多型性を対照群剖検脳と比較・検索したその結果,グルタミン酸輸送蛋白の一種である GLT1のアルツハイマー病脳における。mRNAの発現が前頭葉皮質表層,深部,海馬CA1領域,歯状核にて正常対照剖検脳より有意に低下していた。 ヒト・グルタミン酸輸送蛋白(GluT1)のcDNAをHeLa細胞に発現させ,グルタミン酸の取り込みのアッセイ系を確立した。その系ではグルタミン酸の取り込みは細胞外のナトリウム・イオンを必要としたが,クロライド・イオンは必要としなかった。 この取り込みはL-アスパラギン酸,D-アスパラギン酸,DL-threo-β-hydroxyaspartate,L-cysteine sulfinateなどの薬物によって阻害される。また,L-2-(carboxy cyclopropyl)glycine(L-CCG)の種々のアイソフォームのグルタミン酸取り込みへの影響を調べた。その結果,L-CCG-IIIおよびIVがグルタミン酸の取り込みを著明に阻害した。その結果,グルタミン酸がfolded formにて取り込まれることが明らかになった。 グルタミン酸取り込みを促進させる物質として,エルゴット・アルカロイドがあることを明らかにした。エルゴット・アルカロイドの中でも,ergotamine,bromocriptine,dihydroergotamineなどのアミノ酸エルゴット・アルカロイドがグルタミン酸の取り込みを促進した。しかし,ergonovine,lisurideなどのアミン・アルカロイドにはグルタミン酸取り込み促進作用はみられなかった。アミノ酸エルゴット・アルカロイドなどの薬物はアルツハイマー病脳などで低下したグルタミン酸取り込み能を活性化し,細胞死を防御すると考えられる。
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