研究概要 |
ギラン・バレー症候群患者血清が反応する新しいウシ脳微量ガングリオシド分子の構造決定 ウシの脳から抽出したガングリオシドが,西ヨーロッパや南アメリカでは各種神経疾患に対して広く使用されていた.その後,ウシ脳ガングリオシド注射後に発症したギラン・バレー症候群患者が,少なくとも数10例にのぼることが明らかにされた.ギラン・バレー症候群の発症機序を明らかにするために,患者血清が認識するウシ脳ガングリオシド分子をひとつひとつ同定していく作業を開始した. ウシ脳ガングリオシドをQ-Sepharoseカラムクロマトグラフィーで分画した.ギラン・バレー症候群患者血清を用いて薄層クロマトグラフム免疫染色を行い,反応したバンドのひとつがN-グリコリルノイラミン酸を有するGM1[GM1(NeuGc)]であることを突き止めた.抗GMl(NeuGc)抗体は,GMl(NeuAc)と交叉反応を示し,GM1(NeuGc)が免疫原となった可能性が考えられた.GM1(NeuGc)を含むウシ脳ガングリオシド注射後に,GM1(NeuAc)にも交差反応する抗GM1(NeuGc)抗体が産生され,ギラン・バレー症候群発症に至ることが推測された. GM1(NeuGc)は,ギラン・バレー症候群患者血清が認識する新しいウシ脳ガングリオシド分子である.他にも未同定とされるバンドが数多く存在しており,患者血清が反応する微量ガングリオシドの同定中である.また,構造決定された分子が,ヒト末梢神経にも存在するかを確認していく予定である.
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