研究成果: (1)ウサギ13羽にウシ脳ガングリオシド、Freund完全アジュバントを3週に1回感作を繰り返した。IgM抗GM1抗体産生が誘導されたばかりでなく、IgGヘクラススイッチした。初回感作後5-11週で全例に運動麻痺が生じた。末梢神経に軸索型ギラン・バレー症候群と同様の病理組織学的所見が得られた。これに対して、アジュバント対照群10羽では24週まで1羽も発症しなかった。ウサギ末梢神経よりガングリオシドを抽出し、薄層クロマトグラム-ブロッティングと質量分析を組み合わせて、発症ウサギの血漿IgGが認識する分子がGM1であることを確認した。ウサギ11羽にGM1、Freund完全アジュバントを感作し、IgG抗GM1抗体産生が誘導され、9羽に運動麻痒が生じた。軸索型ギラン・バレー症候群の動物モデルを樹立した。このモデルにおいては、免疫原としても標的抗原としてもGM1が重要な分子であることが明らかにされた。 (2)ウシ脳ガングリオシド、GM1をウサギに感作し、感作ガングリオシド至適量の検討、電気生理、免疫組織学的検討を行った。また、ガラクトセレブロシド感作による脱髄性ニューロパチーモデルと比較した。ガングリオシド投与量に依存して発症率が増加し、2.5mg感作群で全例が重度の麻痺を呈した。よって本モデルでは、ウシ脳ガングリオシド2.5mg感作が適切と考えられた。電気生理学的検討では、ガラクトセレブロシド感作群では急性期より脱髄所見を呈した。それに対し、軸索型ギラン・バレー症候群モデルでは、急性期は一部のF波消失を認めるのみで、複合筋活動電位振幅や伝導速度は異常なかった。免疫組織学的検討では、神経根、馬尾に限局して軸索にIgG沈着を認めた。したがって本モデルでは、血液神経関門が脆弱な神経根に限局して軸索障害が起こることが示唆された。
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