研究概要 |
虚血性心疾患の新しい治療法として,血管新生増殖因子の投与により側副血行血管を発達させることによって虚血心筋への血流を増加させる血管新生療法が注目されている。イヌを使った研究で,この治療法の有効性が数多く報告され,すでにドイツ,米国では臨床応用も開始されている。 イヌの心筋梗塞モデルでbFGF吸着ゼラチンゲル粒子を梗塞部心筋内に注入すると,冠側副血行血管の著明な発達が認められることが判明した。梗塞部の壁運動異常も軽減化しこの治療法が虚血心筋保護に有用であることも確認された。今後の臨床応用として,ゼラチンゲル含侵bFGF心筋内注入療法を計画している。狭心症を有し,内科的治療が無効でPTCA,CABGの対象となる冠血管を有していない患者では,現在のところ,TM(L)R(transmyocardial laser revascularization)が適応となっている。このような症例では,側副血行血管の新生・発達を期待する虚血心筋内へ,ゼラチンゲルに含侵させたbFGFの溶液を注入する。注入量は1ヵ所100μgとし,数カ所までとする。注入箇所は術前のPET検査(アンモニアによる血流シンチとFDGによる糖代謝シンチ)でviabilityを有し,有意な(75%以上)狭窄を有しない供給動脈によって側副血行循環が確保される部位とする。CABG,PTCAとの併用も考慮する必要がある。 EECP(enhanced external counterpulsation)はIABP(intra-aortic balloon pumping)と同様に,大動脈拡張期圧の上昇,収縮期の減負荷により冠血流量の増加,心拍出量の増加を期待するとともに,静脈環流をも増加させるものである。ヘパリン5000単位前投与下でEECPを1日1〜2時間計35時間実施することにより,狭心症患者の狭心発作は軽減することが判明した。この治療法は非侵襲的に冠側副血行血管を発達させる新しい治療法であり今後の大きな進展が期待される。
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