研究概要 |
肥大型心筋症は若年者の突然死の原因として重要な疾患で、病因の解明が望まれる疾患である。本症は種々の収縮蛋白遺伝子異常によるサルコメア病である。トロポニンT遺伝子異常群は、心筋βミオシン重鎖常群に比し、心筋肥厚は軽度で収縮力の低下を示す臨床的特徴が見られ、肥大型心筋症の遺伝的不均一性が存在する。各遺伝子異常による発症機序を解明するため、遺伝子異常トロポニンTの機能の検討とトロポニンT遺伝子異常動物モデルの作製を試みた。1)ヒトトロポニンT変異蛋白の作製とその機能の検討:肥大型心筋症の原因遺伝子として11種の変異トロポニンTが報告されている。ヒト心筋トロポニンTcDNAのクローニングを行い、現在までに報告されている4種類のトロポニンT変異遺伝子(Intron15の二つの変異に加え、新たに3種のPhe 110Ile,Glu244Asp,Arg278Cys)を作製し、変異トロポニンTの生理学的検討を行った。スキンドファイバーでのカルシウム感受性収縮および最大張力は,intron15、Phe110Ile、Glu244Asp、Arg278Cysではwild typeに比し、亢進または不変であった。この結果よりトロポニンT肥大型心筋症の肥大発症に関して,心筋レベルでの収縮力の低下による可能性は少ないと推測された.2)トロポニンT遺伝子異常肥大型心筋症動物モデルの作製およびその機能的検討:ヒトトロポニンT変異のうちIntron15変異、Phe 110Ile、Glu244Asp、Arg278Cysを作成した。同様に3'非翻訳領域の(5'AGATCTTTGGTGAAGGAGGCCA G3')をアンチセンスオリゴヌクレオチドプローブとしてRT-PCR法を用い、マウス心臓DNAライブラリーより全長トロポニンT遺伝子cDNAを抽出した。今後mutagenesis kitを用いて変異トロポニンTを作成し、発現ベクターに組み入れconstructを作成する。
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