本研究の目的は分子遺伝学的手法及び構造生物学的手法を駆使し、アレルギー素因を規定しているアレルギーの多遺伝子群を世界に先駆けて系統的・総合的に解明し、さらにその遺伝子がコードしているタンパクの立体構造を解明し、治療予防に応用することである。 アレルギーの病因遺伝子群を以下の方法で系統的、多角的に検索し、世界的な知見を見出した。3年間のまとめを示す。 (A)B細胞内部の解析。IgEの重鎖をコードするCε遺伝子の上流のSε領域のさらに上流のIε領域(重要な発現調節領域)に着目しオートシークエンサーにより塩基配列を決定した。さらにIε領域の核のクロマチンがIgE高値の患者でよりopenになっていることが明らかになり、これを確認した。 (B)T細胞側の解析。Th1細胞からのIFN-γの産生低下、IFN-γ産生を誘導するIL-12に着目し、その異常を遺伝子学的に解析したところ、IgE高値の患者ではIFN-γ産生が低下しており、それはmRNAのレベルで起こっており、さらにその上位にあたるIL-12の産生やIL-12への反応低下が明らかになった。この原因として、IL-12レセプターβ2鎖遺伝子の異常を世界に先駆け明らかにした。さらにin vitroでIgE産生系を作成し、検討した。結果IFN-γ低下によりIgE産生の抑制が効かないことが示された。これはアレルギーの病因遺伝子の重要な1つがIgE産生抑制系の遺伝子異常であることを示した初めての成果である。さらに、IFN-γ産生を誘導するIL-18に着目し、まず(1)IL-18を大量に精製し、IL-18の立体構造を明らかにした。次いで(2)抑制系であるIL-18シグナリングにつき検討したところ、IL-18レセプターα鎖遺伝子異常によりIgE産生異常を来すことを世界で初めて明らかにした。 上記の成果をもとに、アトピーを遺伝子学的に分類し、オーダーメイド治療・予防への応用を進めている。
|