研究概要 |
世界的に有機酸血症のマススクリーニングの重要性が認識されはじめている.本研究において、GC/MS分析の簡略化、迅速化、感度向上をはかるための基礎的研究を行った.3年間の研究成果は以下の通りである. 1)GC/MSデータ処理自動化システムの確立:我々は長い間に蓄積してきた分析データと経験から、パーソナルコンピューターで短時間のうちに代謝産物を解析し、自動診断するシステムを確立した. 2)尿ろ紙を用いるGC/MSスクリーニングの基礎的検討:検体搬送のために乾燥尿ろ紙法を検討した.VMAろ紙を用いて乾燥させた尿ろ紙は、室温で少なくとも28日間は大部分の化合物が安定であった.実際にアジア諸国から送られた尿ろ紙で600例以上スクリーニングを行い、その実用性を確認した. 3)新生児マススクリーニングの試験研究:島根地方で3年間、GC/MSを用いた新生児有機酸代謝異常マススクリーニングの試験研究を行った.4005例の新生児を分析して1例の高フェニルアラニン血症に遭遇した. 4)1-ブチルジメチルシリル誘導体化(TBDMS化)によるGC/MS分析の検討:GC/MS分析の測定感度を上げるためTBDMS化法を導入したスクリーニングシステムを確立した.従来のTMS化法に比べ測定感度がよく、バラツキも小さかった. 5)血液ろ紙を用いるGC/MSスクリーニング法の確立:血液ろ紙中遊離脂肪酸をGC/MS分析してβ酸化異常症を診断する簡便な手法を確立した. 6)GC/MSを用いた糖新生系異常症の簡便スクリーニング法の確立:糖新生系異常症異常症であるフルクトース-1,6-ジホスファターゼ(FDPase)欠損症は乳児早期に低血糖発作で死亡することが多い.従来本症の診断は容易でなかったが、本研究において、少量の尿をGC/MSマスフラグメントグラフィー法で分析する迅速、簡便なスクリーニング法を確立した.
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