研究概要 |
創傷治癒過程後期,潰瘍局面が再上皮化された後の新生表皮細胞が基底細胞あるいは有棘細胞のどちらの細胞に由来するのかを決定するために,創部の表皮に特異的な遺伝子の組み替えを誘導し,導入した遺伝子自体をマーカーとして,潰瘍面に遊走する有棘細胞の追跡を可能とする遺伝子導入動物の作成をしてた。 このための導入遺伝子として,2つの導入遺伝子を構築した。1つ目の融合遺伝子は,創部表皮の有棘細胞にのみ特異的に遺伝子組み替えを誘導するためのもので,ヒトケラチン6遺伝子由来のプロモーターの下流にバクテリオファージ由来のCREリコンビネースを連結した。さらに,遺伝子をマーカーとして使うための2つめのレポーター遺伝子を作成した。ガラクトシダーゼ遺伝子の両端にCREリコンピネースによって認識されるLoxP配列を配置しておく。さらに第一レポーターの下流には,第二のレポーター遺伝子として緑色蛍光蛋白(GFP)を繋げ,これらは上流に存在するウイルスのプロモーターにより強く多様な細胞に誘導されるように構築した。この2種類の融合遺伝子を染色体上に導入されたマウスを作成し創傷治癒実験を試みた。まず始めにこれらの導入遺伝子を,培養表皮細胞の形質転換に用い,こられが実際に表皮細胞内に発現し有効に働くことを確認した。またこれらの導入遺伝子をもつトランスジェニックスマウスを作成し,それぞれについて5-10系統のマウスを得た。 これらのトランスジェニックスマウスの創傷表皮における導入遺伝子の発現の度合いを,免疫組織染色法を用いてそれぞれのラインのマウスの表皮組織において決定した。 この結果を踏まえて,高発現マウスを2-3系統選び両者の掛け合わせを行った。こうして得られた2つの導入遺伝子をもったマウスを用いて創傷治癒実験を開始した。
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