研究課題/領域番号 |
10557080
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 展開研究 |
研究分野 |
皮膚科学
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
高橋 健造 京都大学, 医学研究科, 助手 (80291425)
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研究分担者 |
福島 大吉 小野薬品工業(株), 水無瀬研究所, 所長
鈴木 義久 京都大学, 医学研究科・形成外科, 助教授 (30243025)
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研究期間 (年度) |
1998 – 2000
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キーワード | 創傷治療 / ケラチン / トランスジェニックマウス / 遺伝子組み替え / 表皮幹細胞 |
研究概要 |
重層上皮組織の創傷治癒反応において、傷が再生された後の組織が基底細胞あるいは有棘細胞のいずれに由来するのかを決定する事を目標とした。創部の表皮に特異的な遺伝子の組み替えを誘導し導入した遺伝子自体をマーカーとして、潰瘍面に遊走する有棘細胞の追跡を可能とする遺伝子導入動物の実験系の確立を行った。 このための導入遺伝子として、ヒトケラチン6遺伝子のプロモーターにCREリコンビネースを連結した。またマーカーとして緑色蛍光蛋白(GFP)とガラクトシダーゼ遺伝子を組み合わせた導入遺伝子を構築した。これらの導入遺伝子は培養表皮細胞内で発現し有効に働くことを確認した。これらの導入遺伝子をもつトランスジェニックマウスを作成し、導入遺伝子の発現の度合いを免疫組織染色法を用いて決定し、高発現マウスを2-3系統選び両者の掛け合わせを行った。こうして得られた2つの導入遺伝子をもったマウスを用いて創傷治癒実験を開始した。 マウスの尾部や体幹に麻酔下でメスにて皮膚全層におよぶ傷をつけ、経時的に創部近傍の皮膚組織をサンプリングし、X-gal染色することで、創傷治癒過程の後期において有棘層の細胞がいかに潰瘍面へと遊走するかを観察し得た。創傷1日後には創傷近傍の表皮細胞が青く陽性に染色された。その後日を追って潰瘍面が完全に上皮化されるまで、サンプリングを繰り返し染色したところ、常に潰瘍面へ接する表皮細胞は強く染色されるが、既に上皮化した再生表皮は白く陰性であることが観察された。創傷近傍のより基底層に近い有棘細胞の運動を追跡するために、フォルボールエステルの塗布を行い、創傷治癒実験を行ったところ、前処理なしの実験同様に創部へ遊走する表皮細胞は青く陽性に染まるが、新生表皮は陰性であった。これらの結果より表皮に代表される重層扁平上皮の創傷治癒反応にも、単層上皮同様に基底細胞が一義的な役割を果たしていると考えられる。
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