研究概要 |
平成12年度は平成11年度までの研究を元に以下の研究を行った。 まずp53のステータスの不明な細胞については、モノクローナル抗体を用いたウェスタンブロッティングで検討した。その結果、U87MGを除いてほとんどの細胞がp53の突然変異型を発現しているか、ヌルの状態であった。細胞レベルでの放射線感受性の検討の結果、従来言われていたp53ステータスのみでは差が大きくなく、元の組織型の放射線感受性とは全く相関しないことが確認できた。また、組織レベルの放射線感受性とp53の発現レベルとの相関も明確ではなかった。そこでAOI, QG56, HeLa S3, U-87MG, A7, Detroit 562, N2, MX-1, HMG-1, SK Mel 26の10種類のKSNヌードマウス移植腫瘍(径15-30mm)について、各々の腫瘍潰瘍部位を避けて、ユニークメディカル社製の酸素電極を用いて酸素分圧の測定を行い、酸素分圧と放射線感受性との相関を立証することができた。そこで、低酸素状態に関係した因子について、血管新生、凝固線溶系因子を中心として、X-線照射後経時的に培養細胞あるいは壊死部を除いた腫瘍組織からmRNAを抽出し、RT-PCRで検討した。その結果、血管新生因子、凝固線溶系因子の細胞レベルでの発現よりもむしろ組織レベルでの発現が重要との結論に達した。即ち、in vitroとin vivoの放射線感受性は、細胞レベルでは細胞周期制御やDNA修復に関連したp53など複数の因子によって、組織レベルではPAI-1など血管新生因子、凝固線溶系因子によって規定される酸素分圧によってというように、それぞれ全く違った機序で規定されている可能性が示唆された。
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