微小核形成試験法を、人腫瘍の増殖能と放射線感受性のpredictive assayとして用いるための検討を行った。種々のヒト腫瘍の手術標本を、細切、酵素処理によって単離細胞とし培養皿にプレートした。それらの一部に2Gyまたは4Gy照射後、サイトカラシンB(1.5μg/ml)を培養液に加えた。それから7日後まで種々の時間培養した後、固定、染色し、顕微鏡下に計測を行った。腫瘍細胞について、二核以上の細胞の割合(分裂細胞分画)、一個の細胞あたりの平均核数が2になる時間(潜在的倍加時間)と二核細胞中の微小核の頻度を求めた。 133個の標本のうち、分裂細胞分画と潜在的倍加時間は78%、微小核発生頻度は70%において評価可能であった。脳腫瘍においては、分裂細胞分画と潜在的倍加時間の中央値は、神経膠芽腫20%、10日、肺癌脳転移21%、11日、乳癌脳転移27%、8.5日、髄膜腫8.2%、53日であった。2Gy照射後の微小核発生頻度から0Gyの値を引いた値の平均値は、神経膠芽腫0.17、肺癌脳転移0.16、乳癌脳転移0.16、髄膜腫0.08であった。原発性肺癌では、それぞれ、腺癌23%、7.7日、0.15、扁平上皮癌26%、8.9日、0.17、大細胞癌27%、6.5日、0.16、小細胞癌30%、7.0日、0.20であり、組織型や病期による差は認められなかった。照射後の微小核発生頻度は、分裂細胞分画および0Gyの微小核発生頻度と相関があった。非小細胞癌においては、分裂細胞分画が中央値より高いと有意に再発率が高かった。また再発した症例においては、潜在的倍加時間はと再発までの期間との間に相関が認められた。この方法で求めた微小核発生頻度の臨床的意義は今後の研究で明らかにするべきものであるが、分裂細胞分画と潜在的倍加時間は腫瘍の増殖能の良い指標となりうると考えられた。
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