研究概要 |
最近、ヒトを含む哺乳動物から、概日リズム形成に関与する生体時計関連遺伝子が次々に単離されている。我々は、ヒトの概日リズム障害の少なくとも一部は、これら生体時計関連遺伝子の異常に基づく可能性が高いと考え、順次遺伝子変異解析を続けている。現在までにリズム障害患者56名(睡眠相後退症候群34名、非24時間睡眠覚醒症候群13名、季節性感情障害6名、不規則型睡眠覚醒パターン1名、周期性傾眠症1名、その他1名)、及び正常コントロール59名についてメラトニン1A,1B受容体遺伝子の解析を終え、アミノ酸置換を伴う核酸配列の変異を2種類づつ計4種類発見した。非24時間睡眠覚醒症候群の一例がメラトニン1A受容体遺伝子及び1B受容体遺伝子の双方に変異を伴っており、1A受容体遺伝子の変異の一つは、正常コントロール群より非24時間睡眠覚醒症候群に多く見られることを見出した。 これらの変異が受容体蛋白の機能に与える影響を調べるため、見出された変異を持つ1B受容体遺伝子を発現ベクターに挿入して培養細胞で人工的に発現させたところ、正常型に比べて発現する受容体の数が少ない傾向が認められた。今回、概日リズム障害患者のごく一部に変異が見出されたのは、「概日リズム障害」と診断されている患者群の中に複数の原因によるものが存在することを示唆していると思われる。 現在メラトニン1A受容体についても変異遺伝子を発現ベクターに組み込み、培養細胞で発現させて機能変化の有無を探っているところである。cAMPの産生抑制などslgnal transductionに関しても変化を生じていないか探る予定である。 per遺伝子など他の生体時計関連遺伝子についても変異解析が進行中であり、結果について順次報告していく予定である。
|