研究概要 |
スタニオカルシン1(STC1)と、34%の相同性を持つ新規カルシウム・リン代謝調節ホルモン(フォスファトニン)と考えられるスタニオカルシン2(STC2)を我々は同定した。STC2は、そのアミノ酸配列から、STC1同様シグナルペプチド配列を有する分泌ホルモンであることが示唆された。しかし、STC2の特性および生理機能に関しては、ほとんど解明されていない。 そこで、STC2C末端の12個のアミノ酸配列をもとに抗STC2抗体を作製した。抗STC2抗体は、組換えSTC2およびCHO-K1細胞(Chinese hamster ovary cell line)に内在的に存在するSTC2を認識し、検出されたバンドのサイズは、STC2のアミノ酸配列から推定される分子量と一致した。以上より、STC2の測定法が確立された。本法を用いてSTC2が多くの組織に発現していることが確認された。次に、各種細胞株を用いて、STC2の分泌機能について検討した。CHO-K1細胞では、STC2は発現量に応じて糖付加修飾を受けた糖タンパク質として構成的分泌が行われることが明らかになった。一方、OK-B細胞(フクロネズミ腎近位尿細管細胞)では、細胞内にSTC2タンパク質が存在しているが、細胞外へ分泌されなかった。OK-B細胞に活性型ビタミンD(1,25(OH)_2D_3)あるいは細胞内カルシウム流入促進剤を作用させると、STC2分泌が誘導されることを見出した。1,25(OH)_2D_3によるSTC2分泌の誘導は、L型カルシウムチャネル阻害剤により著しく阻害された。このことから、1,25(OH)_2D_3によるSTC2分泌誘導は、細胞内へのカルシウム流入が関与していることが示唆された。 以上の結果から、腎近位尿細管細胞のSTC2は、1,25(OH)_2D_3による細胞内へのカルシウム流入を介した分泌調節を受けていることが解明された。
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