研究概要 |
リンは解糖、糖新生、エネルギー代謝および骨代謝に必須の栄養素である。生体のリン代謝恒常性は、腎尿細管のII型ナトリウム依存性リン輸送担体(NPT2)によるリン輸送活性により調節されている。近年、遺伝性低リン血症(XLH)の病態解析から新規カルシウム・リン代謝調節ホルモンの存在が考えられている。XLH患者ではNPT2蛋白、mRNA、リン輸送活性が低下しており原因遺伝子としてPHEXが同定された。PHEXはエンドペプチダーゼをコードしていることよりXLHの病態に腎尿細管のリン輸送活性を抑制する新しいリン代謝調節液性因子(フォスファトニン)の存在が示唆された。我々はXLH患者血清中にNPT2プロモーター活性を抑制するフォスファトニンが多量に含まれていることを明らかにした。 さらに、ヒト骨肉腫細胞からフォスファトニンと考えられるスタニオカルシン2(STC2)を同定した。そこで、抗STC2抗体を作製しSTC2の検出法および測定法を確立した。STC2は多くの組織に発現しているが、CHO-K1細胞(Chinese hamster ovary cell line)では、STC2は発現量に応じて糖付加修飾を受けた糖タンパク質として構成的分泌が行われた。一方、OK-B細胞(フクロネズミ腎近位尿細管細胞)では、細胞内にSTC2タンパク質が存在しているが、細胞外へ分泌されなかった。興味あることに、OK-B細胞に活性型ビタミンD(1,25(OH)_2D_3)あるいは細胞内カルシウム流入促進剤を作用させると、STC2分泌が誘導されることを見出した。この1,25(OH)_2D_3によるSTC2分泌の誘導は、L型カルシウムチャネル阻害剤により著しく阻害された。 以上、フォスファトニンと考えられるSTC2測定法を開発し、腎近位尿細管細胞のSTC2は、1,25(OH)_2D_3による細胞内へのカルシウム流入を介した分泌調節を受けていることが解明された。
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