本研究の目的は子宮内胎児発育遅延の病態を解明するため、慢性的な臍帯圧迫が胎児の発育に及ぼす影響を明らかにすることである。本研究期間においては羊臍帯に装着したオクルーダを用いて臍帯圧迫を行い、それに伴う臍帯血流量・頚動脈血流量の変動パタン、について検討した。 妊娠120日前後の羊を用い、ハロセンによる全身麻酔下で帝王切開により羊胎仔を部分的に露出させ、胎仔に対し頚動静脈カテーテル、心電図電極、羊水カテーテル、臍帯動脈・頸動脈血流量プローブの留置装着を行い、臍帯にオクルーダを装着した。胎児を子宮内に戻し、子宮壁・母体腹壁を修復した後、術後の回復を待ち、準備手術96時間後に胎仔の血液ガス分析、心拍数・血圧測定を行い、生理的状態であることを確認した後に臍帯圧迫実験を施行した。 オクルーダに注入する生理的食塩水の量を調節することにより、臍帯動脈血流量を25%、50%、75%減少させ、それも伴う循環系の変化を観察した。注入した直後は生理的食塩水の量を一定にしても、臍帯血流量は一定とならず漸増する傾向を示した。臍帯血流量を一定に保とうとする胎仔循環系の反応によるものと考えられた。臍帯血流量を減少させた状態で一定に保つために、さらに生理的食塩水を追加注入すると、血流量は大きな変動を示し、時間の経過とともに安定する傾向を示した。圧迫開始1分後にはほぼ安定する傾向を示した。25%減少では心拍数、血圧には変化を及ぼさず、50%では血圧の変化を認めなかったが心拍数は軽度低下した。75%では血圧上昇、心拍数低下を認めた。血圧の変化を伴う場合には臍帯血流量の変化も大きかった。部分圧迫中は頸動脈血流量は増加した。しかしながら、50%臍帯圧迫2分間を2分おきに1時間加50%臍帯圧迫2分間を2分おきに1時間繰り返すと、頚動脈抵抗は次第に増加し、血流が減少する傾向が認められた。
|