研究課題/領域番号 |
10557100
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 展開研究 |
研究分野 |
内分泌学
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
船橋 徹 大阪大学, 医学系研究科, 助手 (60243234)
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研究分担者 |
大本 安一 大塚製薬株式会社, 徳島研究所, 主任研究員
木原 進士 大阪大学, 医学部・附属病院, 医員
中村 正 大阪大学, 医学系研究科, 助手 (90252668)
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研究期間 (年度) |
1998 – 1999
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キーワード | 肥満 / 内臓脂肪 / 生活習慣病 / 動脈硬化 / adiponectin |
研究概要 |
心筋梗塞を初めとする血管病の背景として、過栄養による体脂肪蓄積、特に腹腔内内臓脂肪の蓄積が大きな原因となっている。私達は脂肪組織発現遺伝子の解析から、脂肪組織の中でも特に内臓脂肪がアディポサイトカインと呼ぶべき様々な生理活性分泌因子の遺伝子を多数発現しており、内臓脂肪から分泌されるこれらの因子が直接血管壁に働き血管病発症の一因となっていることを示してきた。本研究は私達が新しくクローニングした脂肪組織高発現遺伝子apM1(adipose most abundant gene transcript 1)の産物、アディポネクチンの生理作用、特に動脈硬化に対する防御作用を検討し、さらに臨床応用へと結びつけようとするものである。アディポネクチンはコレクチン・ファミリーに属するコラーゲン様蛋白で脂肪細胞特異的に合成・分泌される。ヒト血中では多量体を形成しており、5-20μg/mlという高濃度で存在する血漿蛋白であることが明らかになった。抗アディポネクチン抗体を用いた血中濃度測定系をもちいて健常者における血中濃度を測定すると、脂肪組織に特異的な分泌蛋白であるにもかかわらず、その血中濃度は肥満度と逆相関した。また冠動脈疾患患者においては肥満度を考慮しても血中濃度が低下していることより、動脈硬化のマーカーとして臨床的に用いうることを示した。さらにラットモデルを用い、脂肪組織由来分子であるアディポネクチンが傷害血管に沈着すること、培養実験系においてアディポネクチンが動脈硬化の初期反応である血管内皮細胞への単球接着を制御する作用を持つことを示した。この作用は内皮細胞におけるVCAMIやICAMI等の接着分子発現抑制によることが明らかになった。またヒト・アディポネクチン遺伝子を単離し、その染色体座、遺伝子構造を明らかにするとともに、虚血性疾患患者において遺伝子変異を検討したところ、低アディポネクチン血症を伴うミスセンス変異を見出し、過栄養という環境因子とともに、遺伝的要因による低アディポネクチン血症も動脈硬化に結びつくことを示した。本研究により脂肪組織由来内分泌因子による直接的な血管傷害防御作用という新たな概念が確立された。
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