インスリン抵抗性改善剤の新たなターゲット遺伝子の同定

1998 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 10557103
• 研究種目: 基盤研究(B)
• 研究機関: 群馬大学
• 研究代表者: 為本 浩至 群馬大学, 生体調節研究所, 講師 (90292630)
• 研究分担者: 泉 哲郎 群馬大学, 生体調節研究所, 助教授 (00212952)
• キーワード: PPARγ / チアゾリジンジオン / インスリン抵抗性 / ノックアウトマウス

研究概要

PPARγノックアウトマウスの作製は為本が東京大学在籍中に相同組み換えESクローンを選択し、これを用いたキメラマウスからPPARγをヘテロに欠損したマウスが得られた。ヘテロマウスは肥満度および血糖に有意の差を認めなかった。ヘテロどうしの掛け合わせによる子供250匹の解析では、予想に反してPPARγをホモに欠損したマウスは認めず、胎児期での死亡が疑われた。ヘテロどうしの交配から9.5、10.5,11.5,12.5日目に胎児を取り出して、計120匹の胎児で胎児組織または羊膜からDNAを抽出し、PCRを用いて遺伝子型を検討した。その結果、交配後10.5日までは正常胎児とPPARγ欠損胎児に形態上の大きな差を認めなかった。11.5日目からPPARγ欠損胎児に死亡したものおよび成長が遅延したものを認め、12.5日目ではその多くが死亡していたが、一部に生存しているものを認めた。以上から、PPARγがマウスの胎児または胎盤の発達の上で重要な役割を負っていることが示唆された。現在胎児および胎盤に形態上の異常が無いか組織切片を作製して検討中である。また交配後10.5日の段階ではホモの胎児も生存しているため、この時期の胎児または胎盤からRNAを抽出し、ライブラリーを作製し、PPARγ以外にチアゾリジンジオンのターゲットとなる受容体遺伝子を検索する計画である。予備実験として、GAL4との融合蛋白としてPPARγおよびコントロールとして他の転写因子を発現するベクターを作成中である。これを用いて他の転写因子の共存下でPPARγの転写活性が検出可能かルシフェラーゼをレポーターとして検討する予定である。

研究成果

• [文献書誌] Lu D,Tamemoto H,Shibata H,Saito I.Takeuchi T: "Regulatable production of insulin from primary-cultured hepatocytes:insulin production is up-regulated by glucagon and cAMP and down-regulated by insulin." Gene Ther. 5巻7号. 888-95 (1998)
• [文献書誌] Yamauchi T,Ueki K,Tobe K,Tamemoto H,et al.: "Growth hormone-induced tyrosine phosphorylation of EGF receptor as an essential element leading to MAP kinase actvation and gene expression." Endocr J. 45巻補遺. S27-31 (1998)
• [文献書誌] Abe H,Yamada N,Kamata K,Kuwaki T,et al.: "Hypertension,hypertriglyceridemia,and impaired endothelium-dependent vascular relaxation in mice lacking insulin receptor substrate-1." J Clin Invest. 101巻8号. 1784-8 (1998)
• [文献書誌] Okuno A,Tamemoto H,Tobe K,Ueki K,et al.: "Troglitazone increases the number of small adipocytes without the change of white adipose tissue mass in obese Zucker rats." J Clin Invest. 101巻6号. 1354-61 (1998)
• [文献書誌] Tamemoto H,Izumi T,Kaburagi Y,Terauchi Y,et al.: "IRS-1ノックアウトマウス" 日本臨床 56巻補遺3号, 738-45 (1998)