研究概要 |
インスリン抵抗性改善剤のチアゾリジンジオン誘導体(TZD)の受容体は脂肪組織の分化をコントロールする転写因子のperoxysomal proliferator activated receptor1(PPARγ1)である。我々はPPARγ1のノックアウトマウスを作製した。ホモのノックアウトマウスは胎児致死であった。ホモの個体からcDNAライブラリーを作製することはできなかった。死亡する前のホモの胎児から得られた繊維芽細胞は脂肪細胞への分化誘導に抵抗性を示した。ヘテロの個体は一見正常であったが高脂肪食負荷に際して野生型に比して肥満しにくいという興味深い所見を呈した。また、高脂肪食負荷でヘテロマウスはインスリン負荷テストで肥満に伴うインスリン抵抗性が現れにくかった(窪田他,1999)。ホモの胎児は胎生10日から11日の間に死亡し、大きな解剖学的異常を認めなかった。ホモの胎児の胎盤は物質交換に重要なラビリンスと呼ばれる領域の発達が不十分であり、正常では柵状に配列する血管の配列が乱れていた。以上の所見はPPARγとヘテロダイマーを形成して働くRXRのノックアウトマウスの胎盤異常と比較して軽度であった。以上より胎盤発達におけるPPARγの重要性が明らかとなった。(1999年、胎盤研究会で発表)ヒトのインスリン抵抗性患者から発見されたPPARγのネガティブドミナント変異体(Pro427Leu)を組織特異的に、筋肉、脂肪に発現させた場合にインスリン抵抗性が見られるか検討することを計画した。この目的でCre-loxPシステムを利用して変異PPARγ遺伝子を発現するベクターを作製した。
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