研究課題/領域番号 |
10557104
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 展開研究 |
研究分野 |
代謝学
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
石橋 俊 東京大学, 医学部・附属病院, 助手 (90212919)
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研究分担者 |
大須賀 淳一 東京大学, 医学部・附属病院, 医員
原田 賢治 東京大学, 医学部・附属病院, 医員
山田 信博 東京大学, 医学部・附属病院, 助教授 (40200729)
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研究期間 (年度) |
1998 – 1999
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キーワード | コレステロール / スクワレン / スクワレン合成酵素 / ジーンターゲティング / ノックアウトマウス / 先天奇形 / ヘッジホッグ / 神経管閉鎖不全 |
研究概要 |
発生や分化におけるコレステロールの新たな役割が注目されている。コレステロール合成系を構成する酵素の異常症は種々の奇形を合併することが知られる。中でも、中枢神経系を含めて多彩な奇形を呈するSmith-Lemli-Opits症候群はコレステロール合成の最終段階である△7還元酵素の先天異常に起因ることが明らかにされた。同様に、アポBやミクロゾームトリグリセリド転移タンパクなどのノックアウトマウスは重篤な中枢神経奇形を呈する。Hedgehogと呼ばれる形態形成ホルモンはコレステロールと共有結合して初めて機能することが明らかにされ、上述の神経奇形の発症に関わっている可能性が示唆されている。 コレステロール合成系の中で、ステロール経路の最初のステップを触媒するスクワレン合成酵素(SS)の異常は知られていない。この酵素の異常はコレステロールの産生のみ特異的に抑えるため、コレステロールの発生と分化における役割を調べるには格好の分子標的である。そこで、ジーンターゲティングによってSSの欠損マウスを作成した。ヘテロ接合体(SS+/-)同士の交配を行うと、ホモ接合体(SS-/-)はE12.5以前に子宮内死亡するため出生は確認されなかった。E9.5-10.5のSS-/-は成長障害を示し、約半数に神経管の閉鎖不全を認めた。神経組織のアポトーシスを示唆する核濃染の所見が得られた。母マウスを2%スクワレン含有食や1.25%コレステロール含有食で飼育して、血中のスクワレンやコレステロール濃度の上昇を期しても、SS-/-の出生は確認されなかった。一方、SS+/-の肝臓におけるSSのmRNAの発現量は半減し、肝臓と精巣のSS活性も50%に低下していた。ところが、肝臓でのコレステロール合成量には、野生型マウスとの間に差は認められなかった。血中脂質値もリポタンパクプロフィールも、野生型マウスとの間に差は認められなかった。 漿尿膜循環が成熟する以前においては、SSの欠損は胎児のコレステロール欠乏をきたし、その結果、胎生致死をもたらす神経奇形を呈すると考えられた。
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