研究課題
基盤研究(B)
本研究において我々はレーザートラッピング法について生体細胞に適応する基礎を確立し、実際の生体細胞の捕捉・回転操作ができることを世界ではじめて明らかにした。パルスレーザーを用いた微細加工技術については、倒立顕微鏡を用いることによって無菌的操作を可能とし、生体細胞をリンパ球など小型細胞であれば二次元方向で自在に移動させることに成功した。加えて任意の部位へ精密にパルス照射することができるシステムを試作し、これを用いて細胞融合に成功した。更に検討を重ね、細胞融合率は約50%という極めて高い融合率を得、その融合がパルスレーザー照射による細胞膜の小孔によって起きることを確認した。これらの技術はリンパ球とミエローマ細膓の融合に用いられモノクローナル抗体産生ハイブリドーマの作成に成功した。また、同様な装置をもとにレーザーを用いた細胞膜穿孔法による遺伝子導入法の開発に成功した。この遺伝子導入法は選択性を有し、特殊なベクターを用いず、手技が容易で細胞障害を少なくする事が可能であり、他にはない特性をもつ。出力約1μJ/shotのパルス照射により細胞障害無く2μmの細胞膜穿孔を生じさせることができた。付着細胞に対しパルス照射にてGreen Fluoreseent protein発現遺伝子の導入に成功し、約10%の発現率がえられた。浮遊細胞に対してはトラッピングレーザーで固定し、パルスレーザーにてネオマイシン耐性遺伝子を導入、ネオマイシン耐性細胞がえられた。当方法は対象細胞の選択性を有し、ベクターを必要としない新しい遺伝子導入法である。GFP発現遺伝子を用いて発現を検討した点はこれまでに他に報告はない。また浮遊細胞をも対象としたのは今回の報告がはじめてであり、臨床応用(ガン細胞や骨髄細胞へのex vivoでの遺伝子導入)や基礎医学での応用(ES細胞の分化で形態が異なる場合の選択的遺伝子導入)が期待される。
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