本研究の目的は、外科侵襲での炎症・感染における生体防御・炎症遷延化・臓器障害における好中球細胞死の意義を明らかにし、さらに重症感染や重症炎症での好中球のネクローシス防止、アポトーシス誘導に焦点をあてた対策を開発することにある。本研究では以下の研究実績を得た。1)手術患者では、術後経過とともにドレーン排液中と末梢血の好中球のアポトーシスが誘導され、好中球機能も正常化し、炎症所見も消退した。この術後好中球アポトーシスにサイトカインが関与することが示唆された。このような侵襲時の好中球アポトーシスをめぐる現象は、生体防御にとって合目的と考えられる、2)In vitroの検討で得られたIL-6の好中球アポトーシスの抑制作用は、術後患者での早期の好中球アポートシス抑制とサイトカインの関連を支持する、3)細菌数が少ないときには好中球アポートシスは抑制され、好中球寿命が延び、その感染防御能は増強する、逆に細菌数が多いときには好中球はネクローシスで死滅して多量の細胞傷害性メディエーターを放出、これが組織傷害や全身性炎症反応の助長につながる、4)細菌からのエンドトキシン放出や好中球からの炎症性サイトカインを多量に放出させるフィラメント化細菌するβ-ラクタム系抗生剤は、好中球のネクローシスを増加させ、これに対しエンドトキシンやサイトカインの放出が少量である球状殺菌性抗生剤は好中球のアポトーシスを誘導し、ネクローシスを防止する、5)成長ホルモンは好中球アポトーシス抑制、活性酸素産生能を増強する。
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