研究概要 |
1.移植しても生着しない温阻血障害膵を,一定時間20℃の二層法で保存することにより,障害から回復し,移植後の生着が得られる。その機序は保存中の蛋白合成にあるとの仮説に基づき以下の実験を行った.90分温阻血を負荷したイヌの膵臓を20℃,5時間二層法(perfluorochemical/UW液)で保存を行った後,膵組織中のDNA,RNA,蛋白合成を[^3H]-チミジン,[^3H]-ウリジン,[^3H]-ロイシンを二層法保存液に添加し,経時的にそれらの取り込みで検討した。また同時にイヌの頚部に自家移植を行い、生着率も検討した。温阻血負荷直後に移植した移植した群に生着例は認めなかった(0/7、0%)。一方、20℃、5時間二層法保存後に移植した群では全例(7/7、100%)生着した。UW液単独での保存に比べ二層法では、RNAおよび引き続いて蛋白合成が有意に増加していた。一方、DNAの合成には差を認めなかった。以上より、二層法による温阻血障害膵の機能回復の過程に蛋白合成の関与が示された。 2.現在、細胞修復に関与が報告されているストレス蛋白に着目し、膵組織中のHSP-72、60、32の免疫組織染色やWestern blottingを行い、温阻血障害膵の機能回復との関連を検討した。二層法保存後の膵臓にのみHSP-60が誘導されており,温阻血障害膵の機能回復にHSP-60の関与が示唆された。
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