研究概要 |
転移の制御は癌治療の大きな課題のひとつである.我々は,MRP-1/CD9やKAI1/CD82の減弱喪失により癌の転移が起こってくることを突きとめた.そこで,我々は昨年MRP-1/CD9をアデノウィルスを用いて,マウスのメラノーマ株のBL6の原発巣の癌細胞にトランスフェクションし,癌転移の抑制に成功することができた.本年は,更にこれにKAI1/CD82のトランスフェクションをも試みたところ,相乗効果で,更に肺転移の抑制をもたらすことができることが判明した.このTransmembrane 4 superfamilyは,ファミリー自体の他のメンバーやインテグリンファミリーと複合構成体を形成し,細胞接着や運動,シグナルトランスダクションなどに関わっている.そこで,更にこのTM4SF・インテグリン複合構成体そのものを抗体を用いて修復することで癌転移の抑制を試みることにした.インテグリンの抗α3,α4,α5,α6,β1抗体にMRP-1/CD9のcDNAを結合させて,トランスフェクションを試みた.しかしながら,培養細胞系においても細胞膜表面に発現してくるMRP-1/CD9はアデノウィルスを用いた場合に比べ,20分の1以下にすぎず,貧食能の強い特殊な細胞を用いないとイムノジーンによるトランスフェクションはかなり困難であると考えられた.また,MRP-1/CD9のcDNAは抗体のFab部に立体的に交差して,抗原との結合を妨げることがある可能性も判明した.これらのことを踏まえて,更なるイムノジーン療法を考案していきたい.
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