平成11年度の研究成果として以下のことが明らかとなった。S-DEX-50-5についてその細胞接着阻害作用のみならず接着状態の細胞の剥離作用と再接着阻止作用について検討した。その結果、S-DEX-50-5-Aは分裂増殖している癌細胞に対しては剥離作用を示すが、静止状態にある線維芽細胞に対しては剥離作用を示さないことが明らかとなった。また再接着を阻止する作用について癌細胞を用いて検討した結果、0.2mg/mlの濃度でS-DEX-50-5-Aを細胞に作用させた場合には、一旦S-DEX-50-5-Aを取り除いた後にも接着阻止作用は持続し、癌細胞は組織器質に接着出来なくなることが明らかになった。またS-DEX-50-5-Aはこの濃度では直接的な致死的細胞毒性は示さなかった。また動物における腹腔内投与時の毒性について検討した。その結果、治療に要する投与量すなわち体重当りのS-DEX-50-5-A投与量が0.01mg/gでは、マウスにおける毒性は全く認められず、有効量を十分に安全に投与できることが明らかとなった。これらのことから、S-DEX-50-5-Aは将来の臨床応用に有望な接着阻止剤となりうると考えられる。今後はS-DEX-50-5-Aに的を絞ってより詳細な検討を行う予定である。
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