研究概要 |
本研究ではp53をはじめとする種々の細胞周期・細胞死制御因子と膠芽腫細胞の放射線・化学療法感受性との関係を検討し,遺伝子治療にてそれを修飾して,より高い治療効果を達成することを目的としている.平成11年度は以下のような成果が得られた. 1.温度感受性異変p53(34℃でwild type,37℃でmutant type)を持つglioblastoma細胞株を用いて,温度変化に伴うp53機能の変化による化学療法剤および放射線感受性への影響を検討した.その結果化学療法剤においてはp53機能回復によるG1期停止がetoposide,paclitaxelにおけるG2M期関連アポトーシスを阻害し,感受性低下が起こることが判明した.一方放射線感受性はp53の機能回復によりG1期停止に依存して高まるという結果が得られた.これらの結果は近く誌上発表の予定である. 2.遺伝子治療を目的としてadenovirusによるp53遺伝子導入による殺細胞効果を検討し,膠芽腫での効果はCoxsackie/Adenovirus Receptor(CAR)の発現に依存することが判明した(Asaoka et al,J Neurosurg,2000) 3.p53変異を持つlow grade astrocytomaは高い頻度で悪性化進展を起こすことが明らかになった(Ishii et al,Oncogene 1999).またp53変異のうちdominant negative型の変異を持つものは発症年齢が低いことが明らかになった(Marutani et al,Cancer Res 1999) 次年度はこれらの結果を元にp53をはじめとする細胞周期・細胞死制御因子に対する遺伝子治療の研究とともに遺伝子診断に基づく治療選択の応用研究を開始する予定である.
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