研究概要 |
半月板無血行野の断裂に対する半月版ラスピングの有効性とその機序を明らかにするために成熟日本白色家兎を用いて両膝関節を展開して、両内側半月板前節の無血行野(周辺から1/2の部位)に5mmの全層におよぶ縦断裂を作製した。その後、片側半月板はダイヤモンドバーを用いて滑膜周辺部から断裂部まで半月板の大腿骨側表面を約0.5mmラスピングし、術後1日,1,2,4,8,16週で半月板を採取し、interleukin 1-α(IL-1α)、transforming growth factor β1(TGF-β1)、platelet-derived growth factor(PDGF)等のサイトカインとproliferating cell nuclear antigen(PCNA)を用いて免疫組織染色を行った。その結果、ラスピングした半月板大腿骨側表面および断裂部でのこれらの発現が断裂部修復に関与することが判明した。また、成熟日本白色家兎の膝関節から滑膜組織を採取し、組織片培養によって得られた滑膜細胞にエレクロポレーションを行い、transforming growth factorβ1(TGF-β1)遺伝子を導入し培養上清中のTGFβ1をELISA法で定量するとともに、TGFβ1遺伝子導入滑膜細胞をコラーゲンゲルに包埋して、その組織学的観察、およびII型コラーゲン、アグリカン、condromodulinのmRNAの発現を検索した。その結果、TGFβ1遺伝子導入滑膜細胞ではその上清中のTGFβ1の発現が増加し、アグリカンおよびchondromodulinのmRNAの発現を認めた。これによって、TGFβ1遺伝子滑膜細胞がコラーゲンゲルに包埋培養すると軟骨様組織群形成されることが判明し、半月板修復をさらに促進できる可能性が示された。
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