脊髄後角に発現するc-Fos陽性細胞を疼痛の指標として用いることにより、髄核を機械的圧迫なしに神経根に接触させることによって疼痛が発生しうるかどうか、また、発生した疼痛がどのように推移するかについて検討した。対象として、Wistar系雌ラット(n=70、8週令、200g)を用いた。手術的に第5腰椎椎間板の後方線位輪を切開し、髄核を脱出させることにより神経根に対する機械的圧迫のない椎間板ヘルニアモデルを作成した。同様の手術を行い、椎間板に対する操作を行わない群をコントロール群とした。手術後、8時間、12時間、1日、3日、7日、14日、28日、42日に両群を潅流固定し、免疫組織化学的手法を用いてc-fosの染色を行い、脊髄後角を観察した。脊髄後角III層とVVI層において、c-fosは神経根への髄核接触後各々8時間と1日で最も多く発現し、2週間で減少していた。一方、脊髄後角IIIIV層に発現したc-fosは2週以降も持続していた。今回の脊髄後角III層とVVI層におけるc-fosの検定により、神経根に髄核が接触することで、神経根への機械的圧迫がないにもかかわらず、比較的早期から疼痛が出現し、2週目以降では疼痛刺激の入力が減少していくということが判明した。また、脊髄後角IIIIV層でのc-fosの発現は、神経根からの持続的な異常興奮の入力により脊髄後角に可塑的な変化が生じた結果と考えられた。
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