研究概要 |
本研究では、椎間板変性実験モデルに対して、同種他個体の髄核細胞の再挿入による椎間板変性過程への影響を検索する。方法:体重1.3Kgの日本白色家兎16羽を用い、経腹膜外経路で腰椎前方を展開し、L2/3からL6/7の5椎間板前側方より21G針を用いて髄核を吸引し、変性モデルを作成する。2週後対側より再展開し、各椎間に再挿入を行う:L3/4(新鮮髄核再挿入)、L4/5(酵素処理後回収した1x10^4個細胞+メディウム)、L5/6(同様に1x10^3個)、L6/7(新鮮髄核+メディウム)。再挿入後2、4、8、16週で屠殺し、HE、SafraninO,II型コラーゲン、等の評価を行う。結果:髄核の非再挿入椎間板(L2/3)では、髄核部の空砲をもつ細胞数の著しい減少と基質の染色性低下、線維輪の断裂と蛇行がみられた5線維輪内層のchondrocyte様細胞の集蔟がみられた。髄核の再挿入を行った群では、いずれも線維輪の形態が保たれ、髄核基質の染色性も良く維持されていた。線維輪内層部のchondrocte様細胞の出現が少数例ではあるがやや早期にみられ、同一個体内の髄核再挿入例とは若干異なった所見であった。しかし、再挿入髄核や母髄核部での炎症性細胞の出現や血管浸潤はみられなかった。II型コラーゲンの出現パターンも、同一個体内のcoculture髄核の再挿入と同様に、変性進行例で線維輪内層が高値を示す傾向であった。考察:今回のモデルでは、自己新鮮および凍結髄核や、coculture培養髄核細胞の再挿入に比べ、椎間板変性の程度がやや強い傾向であったが、非再挿入椎間板とは有意な差がみられ、他個体に対する免疫拒絶反応も明らかでなかった。細胞の処理法の工夫により、活用しうる方法と考えられる。
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