研究課題/領域番号 |
10557138
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
芝本 利重 信州大学, 医学部, 助教授 (90178921)
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研究分担者 |
羽二生 久夫 信州大学, 医学部, 助手 (30252050)
小山 省三 信州大学, 医学部, 教授 (00115346)
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キーワード | hepatic circulation / liver injury / triple occlusion pressure / portal pressure / ischemia reperfusion / vascular resistance / capillary pressure |
研究概要 |
【本年度の研究目的】 外科手術時及び肝移植時に生ずる急性肝障害として知られる虚血再潅流時の門脈圧上昇、肝内血管抵抗の増加、肝鬱血のメカニズムを解明する。 【実験方法】 ラット自家血液を5%albumin-kerbs液で希釈したHct3%の潅流液を用いて肝動脈は定圧潅流し、門脈は定流量潅流するラットの摘出潅流肝臓標本を確立した。次に、門脈と肝動脈のみを閉塞して、肝静脈を開放した虚血状態1時間後に潅流を再開した際の肝内血管抵抗の分布の変化をtriple occlusion pressure(Pto)により肝毛細管圧を測定し、門脈抵抗(Rpv),肝静脈抵抗(Rhv),肝動脈抵抗(Rha)に分けて経時的に解析した(n=8)。肝重量を連続的に測定し、肝内血液量の変化、肝鬱血を評価した。さらに、胆汁量も測定し肝細胞機能の指標とした。 【実験結果】 再潅流により門脈圧は7.3±0.2(SE)mmHgより潅流開始後1.5分に18.0±1.2mmHgの最大値に達した。総肝血管抵抗(Rt)も259±15%に増加した。毛細管圧であるPtoは虚血前の2.8±0.1mmHgから4.8±0.3mmHgに増加した。血管抵抗はprecapillaryの血管抵抗であるRpvとRhvはそれぞれ292±19%と137±14%に増加したが、postcapillaryのRhvも有意に191±12%に増加した。その後、血管抵抗は低下し60分後には130%前後まで回復した。再潅流後の肝重量は2相性の増加反応を示した。すなわち潅流後3分に肝毛細管圧の上昇と一致して虚血前に比べて肝臓10g当たり1.2±0.2gの増加のピークに達した後、再潅流後20分最低となり、その後門脈圧と毛細管圧が低下したにも関わらず、再び増加し、60分には虚血前に比べて1.0±0.3g増加した。一方、胆汁は再潅流開始後29±4分から流出が見られたが60分には虚血前の41±8%に低下し、肝細胞機能障害が示唆された。 【考察・結論】 虚血再潅流直後の肝鬱血には明らかな肝静脈側の収縮による肝毛細管圧上昇が関与していることが今回の検討ではじめて明らかとなった。さらに、再潅流後半の肝重量の増加は肝内血管圧がほぼ虚血前に復帰していることから肝内血行動態以外の因子による肝細胞障害によることが示唆された。なお、肝逸脱酵素の検討は現在進行中であり、さらにレーザー血流計による測定も検討中である。
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