研究概要 |
交感神経性皮膚血流反応(Skin vasomotor reflex,以下SVmR)は,侵害刺激入力の指標であり,また,痛みの客観的評価法としても有用であることを明らかにしてきた(平成8-10年度、奨励研究)。今年度は,全身麻酔中の患者でSVmRの出現頻度と血中カテコラミン濃度の変化を観察した。硬膜外麻酔併用全身麻酔下の下腹部開腹手術患者において、電気刺激(40mA、50Hz,テタヌス刺激、3秒間)でのSVmR誘発による硬膜外麻酔領域判定を行った。その結果,T6の皮膚分節以下の刺激でSVmRが誘発された場合,開腹鉤の使用でSVmRが出現した。その時点での血中アドレナリン濃度に変化なかったが、血中ノルアドレナリン濃度は有意に増加していた。この結果は,従来報告されている腹膜の牽引による刺激を抑える領域とほぼ一致し,硬膜外麻酔の効果が不十分であったと考えられた。また、全身麻酔下で、電気刺激強度変化(刺激強度,刺激時間)によるSVmRの変化を定量的に評価した。刺激強度、時間の増加に伴い、SVmRの血流減少比は大きくなった。この変化は,吸入麻酔薬の濃度を上げることで小さくなった。全身麻酔下でも,侵害刺激強度の変化に鋭敏に反応し,SVmRの定量的評価により,麻酔深度の測定が可能であることが示された。来年度は、動物実験による循環作働薬の影響,各種自律神経疾患モデルにおけるSVmR変化を検討し,痛みの定量化とその裏付けを行う予定である(現在進行中)。
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