研究概要 |
臨床研究として,全身麻酔中の手術刺激もしくは既知の定量的刺激に反応した交感神経性皮膚血管運動反射(以下SVmR)の振幅を計測し,従来の臨床的麻酔深度判断並びに解析脳波(pEEG)と比較した。覚醒状態,軽度鎮静下のボランティアに対し,既知の定量的刺激に反応したSVmR振幅を計測した。動物実験ではラットを用いて麻酔深度を変え,定量的刺激によるSVmR振幅ならびに皮膚切開を加えた際のSVmR振幅を計測比較した。その結果,以下のことが明らかとなった。 (1)刺激強度が一定であれば麻酔深度とSVmR振幅は反比例し,麻酔深度が一定であれば刺激強度とSVmR振幅は正比例する。 (2)全身麻酔下でも,誘発SVmR法で知覚神経の局所的な遮断の有無が明確に区別できる。 (3)手術刺激によるSVmR出現頻度はpEEGのSEF90と相関はなかった。 (4)刺激強度とSVmR振幅の正比例関係は,覚醒状態でも見られ,軽度鎮静では影響されないが,軽度鎮痛では反応全体が減少するが直線的関係は維持される。 (5)ラットでもSVmRは足底部で認められる。耳動脈領域ではヒトでは測定出来ないがラットではSVmRを計測出来る。 (6)ラットでは誘発SVmR振幅の麻酔薬による抑制は,ヒトに比べ麻酔深度が浅い時点から認められ,早期に完全に消失する。 (7)誘発SVmR振幅/刺激強度(時間×電流量)はラットの場合はイソフルラン0.5〜1.5%麻酔ではほぼ一定の値を示す。
|