研究概要 |
交感神経性皮膚血管運動反射(Skin Vasomotor Reflex:SVmR)を指標とした麻酔深度モニタの臨床応用について,臨床研究と動物実験を行い,以下のような結果を得た。 1.臨床研究 1)一定吸入麻酔下において,刺激強度を変化させてSVmRを誘発した際,刺激強度とSVmR振幅値ならびにSVmR面積値は正比例した。 2)麻酔深度を変化させて,一定の刺激強度でSVmRを誘発すれば,麻酔深度とSVmR振幅値ならびにSVmR面積値は反比例した。 3)刺激強度とSVmR振幅値の正比例の関係は,覚醒状態,軽度鎮静状態の健康成人ボランティアにも認められた。 4)鎮痛作用のある亜酸化窒素吸入では刺激強度とSVmR振幅値の正比例の関係を有したままSVmR振幅の減衰(傾きは変化せず,y軸切片のみが低下)が認められたが,鎮静作用のみをもつミダゾラムではこのような変化を見なかった。 2.動物実験 1)ラットにおいて,再現性のある精度の高い皮膚血流測定部位を検討したが,レーザードップラ血流計を用いる場合,足底部にプローブを装着した場合はデータのばらつきが大きく,耳介背面基部にプローブを装着するとより安定したデータが得られた。尾動脈を露出し,直接プローブを装着した場合が最も血流反応を観察でき,ラットにおける血流反応観察モデルとして最適と考えられる。 2)ラットにおいても刺激強度と血流反応の大きさには直線的な相関関係を認めたが,決定係数はヒトに比べ小さく,測定部位の問題から,ラットにおいてはSVmRと循環変動による血流反応を混在して評価している可能性が示唆された。
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