研究概要 |
男子不妊症の診断法と治療法の開発をめざし、基礎、臨床の両面から研究を行い、次のような知見が得られた。 臨床的研究 聖マリアンナ医科大学倫理委員会の承認のもと、男子不妊症患者のDNA収集を行い、現在約400名のジーンバンクが構築できた。これらDNAについての解析として、まずはSPMIの前駆体であるSemenogelin geneのDNA配列を検索中である。また、精子形成には多くの遺伝子が働いているが、ゲノム解析の結果から、Y染色体には精子形成に必須の遺伝子が複数かつ多コピー存在することが知られている。そこで、Y染色体DNA多型についての検討を行っている。そして、DNAと同時に患者の精漿も凍結保存しており、以後SMPI活性等を測定し、DNA異変や多型との関連性を検討してゆく。 基礎的研究 Semenogelinを用いた治療薬の開発を目指し、Semenogelinのrecombinant proteinの発現系の確立に取り組んだ。baculo virusにSemenogelin-I及び-IIのDNAを組込み、Sf21細胞に感染させると、感染後48時間よりSemenogelin蛋白の発現が見られ、これをNi-NTA resinを用いて90%以上の純度で精製することに成功した。精製したSemenogelinは可溶性で、SPMI活性は60U/mgとnativeなSemaenogelinとほぼ同等に高活性であった。また、このrecombinant蛋白をウサギに免疫し、得られた血清をアフィニティーカラムで精製し、抗Semenogelin抗体を作製した。この抗体はnative,recombinant両方のSemenogelinと強く反応するだけでなく、精漿中でPSAにより分解を受けた低分子のSPMIとも特異的に反応することが判明した。これらの結果は、Int.J.Mole.Med.に発表した。
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