研究課題/領域番号 |
10557155
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
田野 保雄 大阪大学, 医学部, 教授 (80093433)
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研究分担者 |
林 篤志 大阪大学, 医学部, 助手 (20283773)
前田 直之 大阪大学, 医学部, 助手 (00273623)
大路 正人 大阪大学, 医学部, 講師 (90252650)
不二門 尚 大阪大学, 医学部, 教授 (50243233)
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キーワード | 網膜移動術 / アポトーシス / レクチン / 網膜 / イヌ |
研究概要 |
全身麻酔下にて10頭のビーグル犬の片眼に対して、強膜短縮を用いた網膜移動術を施行し、網膜移動距離および網膜組織像について検討した。イヌはヒトと眼球構造が異なり、渦静脈が周辺部強膜内を走っているため手術操作がヒトよりも煩雑になった。強膜短縮は、耳側赤道部強膜において約180度にわたり輪部より7mmと11mmに5糸のマットレス縫合を置いた。硝子体手術の方法を用いて30ゲージ鈍針により意図的網膜剥離をほぼ全範囲に作成した後、マットレス縫合を締め強膜短縮を行った。その後、網膜をほぼ完全に復位させ、手術を終了した。網膜移動距離は、術前眼底写真と術終了時のビデオ画像より算出し、鼻内側に平均0.53±0.30乳頭径移動していた。また、術後早期の組織学的変化を調べるため、術後1週、2週、4週で眼球摘出を行い、網膜組織を光学顕微鏡的に観察した。まず、強膜短縮に必ず伴う網膜襞における網膜の変化をみるため、視細胞の錐体細胞のmatrixをピーナツレクチン(PNA)を用いて染色したところ、網膜襞内の錐体細胞のmatrixが著明に減少していた。また、網膜襞内の外顆粒層が減少し、視細胞の配列が乱れていた。次に、術後網膜におけるアポトーシスを検討するため、ApopTag(Oncor社)を用いて組織化学染色を行ったところ、網膜襞内の視細胞に強い陽性反応が認められた。しかし、意図的網膜剥離を作成したが網膜襞を形成することなく復位した網膜においては、PNA染色も正常網膜と同様な染色を示し、アポトーシスの陽性反応も認められなかった。強膜短縮を用いた網膜移動術においては、網膜襞の形成部位をコントロールしていく必要があることが明らかになった。今後、もう一つの術式である周辺部網膜全周切開を用いた網膜移動術についてさらに検討を行い、これらの手術適応、手術侵襲を評価していく予定である。
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