研究課題/領域番号 |
10557155
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 展開研究 |
研究分野 |
眼科学
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
田野 保雄 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (80093433)
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研究分担者 |
前田 直之 大阪大学, 医学系研究科, 講師 (00273623)
大路 正人 大阪大学, 医学系研究科, 講師 (90252650)
不二門 尚 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (50243233)
林 篤志 大阪大学, 医学系研究科, 助手 (20283773)
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研究期間 (年度) |
1998 – 1999
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キーワード | 加齢黄斑変性 / 中心窩移動術 / 硝子体手術 / 動物実験 / 網膜電図 / アポト-シス |
研究概要 |
加齢性黄斑変性および近視性血管新生黄斑症などの難治性黄斑疾患に対する外科的治療として、我々は中心窩移動術の開発を行ってきた。本研究では、イヌ眼およびサル眼を用いて強膜短縮あるいは網膜全周切開による中心窩移動術を施行し、術式および組織学的、電気生理学的検討を行った。また、文書で患者の同意を得た上で、臨床例における中心窩移動術の検討を行った。 強膜短縮による網膜移動術をイヌ眼を用いて行ったところ、後極部網膜に網膜襞形成が必発であること、網膜移動距離が1乳頭径前後であることを、組織学的には、網膜襞内の網膜ではアポトーシスを生じていることを明らかにした。臨床例では、脈絡膜新生血管板の小さな症例(特に近視性新生血管黄斑症など)に適応となり、手術浸襲が少なく、術後視力の良好な症例があった。網膜全周切開による中心窩移動術については、サル眼を用いて手術を施行し、手術手技の改良を行った。特に意図的網膜剥離作製時に生理的網膜接着を弱めるため、カルシウムを含まない灌流液を用いて灌流を行うことで、後の手術操作を容易にし、手術時間を短縮することができた。組織学的には、サル網膜の中心窩の電子顕微鏡観察を行い、中心窩視細胞の部分的消失が生じていた。しかし、術後網膜には、アポトーシスは検出されなかった。網膜電図による径時的検討では、術後1ヶ月では、フラッシュ、桿体、錐体、フリッカーの各網膜電図のいずれも低下していたが、術後2ヶ月では、それぞれ術前の測定値の54%,49%,34%,43%まで回復した。サル眼においては網膜接着が強く、意図的網膜剥離作製時に網膜色素上皮障害を生じる場合が多かった。臨床例では、網膜全周切開による中心窩移動術により視力回復あるいは維持の得られた症例が70%あり、今後さらなる検討を行っていくことにより、中心窩移動術が難治性黄斑疾患に対して有効な治療法となっていくと考えられる。
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