研究概要 |
当初、自殺遺伝子の導入により同種シュワン細胞に対し選択的に細胞死を誘導する事を検討していたが、その研究過程においてシュワン細胞は生理学的状況においてアポトーシスを生ずる事が分かった(論文-6)。更に、このアポトーシスが軸索再生における神経ネットワークの混乱を回避する為に不可欠な現象であることが明らかとなった(論文-7)。そこで、シュワン細胞におけるアポトーシスの分子機構を検討した。その結果、神経栄養因子およびそのレセプターを介したアポトーシスの機構が明らかとなった(詳細に関しては現在論文にまとめて投稿中であり、公表は現時点では避けたい)。また、シュワン細胞の3次元培養系を確立し、これを用いてアポトーシス誘導機構の制御が軸索再生に及ぼす影響をex-vivoで調べた。その結果、アポトーシス誘導機構は一方ではワーラー変性におけるシュワン細胞の分化制御、ひいては論文-2,3,4で検討されたシュワン管構造の形成に深く関与し、これにより再生軸索の誘導に非常に重要な役割を果たす事が明らかとなった(同様の理由により詳細の公表は現時点では避けたい)。以上の事はシュワン細胞のアポトーシス誘導機構が末梢神経系における軸索再生の鍵を握っている事を示しており、遺伝子導入によりこの機構を制御する事の有用牲を示唆していた。そこで、現在アポトーシスの制御機構に関係する遺伝子およびそれらのアンチセンスの導入を試みており、遺伝子導入同種シュワン細胞と自己シュワン細胞を組み合わせた移植の有用性を確認している。
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