新規軟骨由来血管新生因子(CTGF)に対する阻害剤の開発と血管新生治療への応用

1998 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 10557165
• 研究機関: 岡山大学
• 研究代表者: 滝川 正春 岡山大学, 歯学部, 教授 (20112063)
• 研究分担者: 玉谷 卓也 日本たばこ産業KK医薬総合研究所, 医薬基礎研究所, 主席研究員 ; 服部 高子 岡山大学, 歯学部, 助手 (00228488) ; 中西 徹 岡山大学, 歯学部, 助教授 (30243463)
• キーワード: 血管新生 / 結合組織成長因子 / CTGF / 抗CTGF抗体 / 血管内皮細胞

研究概要

1) ヒトCTGFペプチド断片を合成あるいはリコンビナントCTGFを大量に調製し、これらを動物に免疫して、ポリクロナール特異抗体を調製した。さらに、マウスに免疫し多数のモノクローナル抗体を作製した。
2) 鶏卵漿尿膜に1-2ugのリコンビナントCTGFをグラスファイバーフィルターに滲み込ませて投与するとbFGFに匹敵する著明な血管新生が見られた。また、マウス皮下にCTGFをコラーゲンキャリアーとともに注射すると著明な血管新生がみられた。
3) CTGFはin vitroで血管内皮細胞の接着、増殖、遊走を促進し、また、管腔形成を誘導した。すなわち、血管新生の全過程を促進することが判明した。特に管腔形成作用は強力でbFGRやVEGFと異なり、コラーゲン等でコートしていないプラスチックシャーレ上でもみられた。
4) 上記のポリクロナール抗体はCTGFの血管内皮細胞の接着、増殖、遊走すべてに対する促進作用を阻害した。
5) 鶏卵漿尿膜の実験系で上記のポリクロナール抗体を同時に投与するとCTGFによる血管新生が著明に阻害された。
以上、抗CTGF抗体が血管新生阻害剤として極めて有望な物質であることが明らがとなった。
6) 一方、組み換えCTGFタンパクを^<125>Iで標識し、ヒト軟骨細胞様培養細胞株HCS-2/8への結合試験を行い、受容体を同定した。また、^<125>I標識CTGFと細胞膜受容体とをクロスリンク後、電気泳動してオートラジオグラフィーを行い、受容体の分子量を約240kDaと決定した。すなわち、CTGF受容体を介して血管新生を阻害するアプローチの可能性も開かれた。

研究成果

• [文献書誌] Shimo,T.: "Inhibition of endogenous expression of connective tissue growth factor by its antisense oligonucleotide and antisense RNA suppresses proliferation and migration of vascular endothelial cells" J.Biochem.124. 130-140 (1998)
• [文献書誌] Nishida,T.: "Demonstration of receptors specific for connective tissue growth factor on a human chondrocytic cell line (HCS-2/8)" Biochem.Biophys.Res. Commun.247. 905-909 (1998)
• [文献書誌] Tamatani,T.: "Establishment of the enzyme-linked immunosorbent assay for connective tissue growth factor (CTFG) and its detection in the sera of biliary atresia" Biochem.Biophys.Res. Commun.251. 748-752 (1998)
• [文献書誌] Ohnishi,H.者: "Increased expression of connective tissue growth factor in the infarct zone of experimentally induced myocardial infarction in rats" J.Mol.Cell Cardiol.30. 2411-2422 (1998)
• [文献書誌] 滝川正春: "基礎からみた整形外科領域のサイトカイン" 整形・災害外科. 41. 3-12 (1998)
• [文献書誌] 滝川正春: "内軟骨性骨形成に最も重要な新規成長因子 CTGF" 細胞工学. 17. 357-362 (1998)
• [文献書誌] 服部高子: "VEGF" 関節外科. 17. 904-905 (1998)